思わず声に出したくなる言葉ってありますよね。
たとえば…
などは語感が良すぎて意味もなく声に出したくなります。
墾田永年私財法の他には、
- サイン・コサイン・タンジェント
- 高濃度茶カテキン
- ポリプロピレン
- ペンパイナッポー アッポーペン
…探してみると無限にありますね。
実際に声に出さずとも、頭の中で考えるだけでどこかリズミカルで心地よい言葉です。
そんな言葉達をたくさん集めて眺めていると、なぜ声に出したくなるのか気になりましたので、その理由を3つ考えてみました。
- 声に出したい理由① 「音の楽しさ:半濁音の法則」
- 声に出したい理由②「発音しやすい母音の組み合わせで韻を踏んでいるか」
- 声に出したい理由③「日本古来のリズム:七五調」
- 声に出したい言葉の3つの理由まとめ
声に出したい理由① 「音の楽しさ:半濁音の法則」
声に出したい言葉は、音としての楽しさがあります。
たとえば…
- ポリプロピレン
- ポプテピピック
- ペコパ
- プノンペン
- ポケモンパン
- ドドンパ
半濁音の法則と言って、商品の名前などに「ぱぴぷぺぽ」が付く言葉はヒットしやすいと言われております。
逆に、濁音(が行、ざ行、だ行、ば行)や半濁音(ぱ行)の入らないネーミングは、"音のひっかかり" がないため人の印象に残りにくいと言われています。
ぱ行の音は子供に好かれやすい音なので、人気のお菓子や子供向け番組を見るとよくわかります。
- ポッキー
- プリッツ
- アポロ
- ポポロン
- ポリンキー
- アンパンマン
- プーさん
- ガチャピン
- おっぱっぴー
- ポンキッキ
語感の良い言葉ランキング
個人的な音の気持ちよさランキングを作ると、
- 半濁音(ぱ行)
- 濁音(が行など) & 拗音('しゃ'とか'にゃ'など、イ段に小書きのや行が付く)
- 無声破裂音(か行、た、て、と)
- 無声破擦音(ち、つ) & 無声摩擦音(さ行、は行)
- その他 半母音(や行、わ行) & 流音(ら行) & 鼻音(な行、ま行) などなど
(口から出る発声音の強さランキングみたいですね。下の方ほど優しいイメージ)
合わせ技で、発声がしやすい並びの言葉だと、なお気持ちよく聞こえます。
「ポリプロピレン」を分解すると「PoRi PuRo PiRen」で、母音を抜き出すと「おいうおいえん」になります。
実際に口を動かすと口の中が凄い動いて、同じ音の発音が無いことがわかります。
詳しくは事項で解説します。
声に出したい理由②「発音しやすい母音の組み合わせで韻を踏んでいるか」
語感の良い言葉とは、口の動きが楽しいものです。
たとえば…
- レッドホットチリペッパー
- 高濃度茶カテキン
- ガダルカナル島
- シャカシャカチキン
- ハンプティダンプティ
- 環太平洋造山帯
- マグナカルタ
- 有象無象
声を出す時に、口の開き具合の組み合わせで発音のしやすさが変わります。
早口言葉の「生麦・生米・生卵」は、連続で発声しにくい鼻音(な行、ま行)を多用しております。
母音の口の形を大きさ順に並べるとこの順になります。
あ:大 > え:中 > お:細 > う:小 = い:平 > ん:無
'ん' は口を閉じているので、8分休符程度の休みのような感じ。
これらを意識して口の動きが気持ち良い並びに言葉を組み合わせることがポイントです。
口の動きが気持ちよくなるように単語やリズムで韻を踏めば語感がよくなります。
例1.韻を踏んでいる:ハンプティダンプティ
ハンプティ / ダンプティ → 母音:あんういぃ / あんういぃ
口の動きは「大・小平平 / 大・小平平」となり、母音と口の動きでリズムよく韻を踏んでいることがわかります。
※母音が異なっても口の動きのリズムが似たリズムだと韻を踏むような効果があります。
※韻の踏み方には、大きく分けて「脚韻」「頭韻」「母韻」「子韻」の4つがあります。
韻を踏むメリットとして「ザイオンス効果」(単純接触効果)があります。この場合は似たような発音の言葉を繰り返すことによって高感度が高まる効果があります。
例2.スムーズな口の動き:ちんぷんかんぷん
ちんぷん / かんぷん → 母音:いん うん / あん うん
口の動きは「平・小・ / 大・小・」となり、間の「ん」がリズムを作り、口の動きをスムーズに変化させて韻を踏んでいるのが気持ち良いです。
他に、口が小さい動きから後半で大きく動く言葉や、大から小の流れを繰り返す言葉など、細かく分けると気持ち良い母音の並びがあったり、韻の踏み方もたくさんあるのですが、例を考えるのが疲れるので割愛。
声に出したい理由③「日本古来のリズム:七五調」
七五調は日本古来のリズムで作られております。
たとえば…
- 墾田永年私財法
- 王政復古の大号令
- サイン・コサイン・タンジェント
- 中華人民共和国
- スリジャヤワルダナプラコッテ(スリランカの首都)
- 天皇皇后両陛下
言語のリズムは大きく分けると、英語などのアクセントからアクセントまでのリズムが等間隔の「強勢拍リズム」と、フランス語などの音節ごとに等間隔のスピードとなる「音節拍リズム」の2つに分かれます。
日本語は「音節拍リズム」ですが、そのなかでも特殊な、1文字ごとに同じ速度となる「モーラ拍リズム」に当たります。
俳句を詠むとよくわかりますが、1文字ごとに同じ速度で読みます。
日本語は一定の速度がベースの言語なので、文字数でリズムを作っております。
口に出すとリズミカルになる言葉は俳句にも通じる「七五調」のリズムの言葉である事が多いです。
七五調とは、「いろはにほへと ちりぬるを〜」のように5拍、7拍の繰り返しで構成されております。
今回の分類として、
・墾田永年私財法(こんでん / えいねん / しざいほう)のような 4拍 / 4拍 / 5拍のもの、
・サイン / コサイン / タンジェントのような、3拍 / 4拍 / 5拍のもの、
・信じるものは救われる(しんじる / ものは / すくわれる)4拍 / 3拍 / 5拍
のリズムがあります。
五七調は語感がよくなるのでキャッチコピーによく使用されております。
例1: 4・4・5のリズム
- お金で買えない 価値がある(CM)
- 明日は明日の 風が吹く (風と共に去りぬ)
- 患部で止まって すぐ溶ける(痔治療薬の宣伝など)
- ギザギザハートの 子守唄(チェッカーズ)
- 世界の果てまで イッテQ!(バラエティー番組)
- 隣のジジイの犬逃がす(あるある探検隊のネタ)
- 同情するなら 金をくれ(家なき子)
- 生麦・生米・生卵
- 逃げるは恥だが 役に立つ (ハンガリーのことわざ、ドラマ)
- 100人乗っても 大丈夫!(イナバの物置CM)
- 言っても分からぬ 馬鹿ばかり (DEATH NOTEの夜神月)
- たたいてかぶって ジャンケンポン
- 桃栗三年 柿八年
- ラーメン つけ麺 僕イケメン (狩野英考のギャグ)
- ラミパスラミパス ルルルルル (ひみつのアッコちゃんの呪文)
- 人生楽ありゃ 苦もあるさ (水戸黄門)
- 押さないかけない 喋らない
例2: 3・4・5のリズム ※3の前に休符を入れると4・4・5と同じリズムになる。
- 支点・力点・作用点
- アゼルバイジャン共和国
- 当たり前田のクラッカー (CM)
- 終わりよければ 全てよし(シェイクスピアの戯曲)
- これが私の生きる道(PUFFY)
- ここで会ったが 百年目(時代劇のセリフ)
- 地震・雷・火事・親父
- セブンイレブン いい気分(CM)
- タネも仕掛けもありません
- 鳴くよウグイス平安京
- 母をたずねて三千里
- 秘密戦隊ゴレンジャー (以後戦隊モノタイトルも)
- 豚もおだてりゃ木に登る (アニメ:タイムボカン)
- 笑う門には福来る
例3: 4・3・5のリズム ※3の後に休符を入れると4・4・5と同じリズムになる。
- 隣は何を する人ぞ (松尾芭蕉)
- 君死にたまふ ことなかれ (与謝野晶子)
- 重要無形文化財
- 気球にのってどこまでも
- 信じるものは救われる
- 水兵リーベ僕の船
- スーパーマリオブラザーズ
- すももも ももも もものうち
- 欲しがりません勝つまでは
- ペンパイナッポーアッポーペン
七五調の語呂が良い理由
このような七五調言葉の語呂が良く感じる理由は、「四拍子に合う」のが理由との事。
1、2、3、4、 1、2、3、4… と四拍子に合わせて上記の言葉を呟くと、面白いくらいしっくりくるのでぜひ声に出して読んでみて下さい。
また、下記のような歌詞が七五調で作られた楽曲は、歌詞を上記の言葉に置き換えて歌うとピタリとおさまり、楽しく歌えます。
- 童謡「どんぐりころころ」 (どんぐりころころ ドンブリコ〜)
- 水戸黄門の主題歌「ああ人生に涙あり」(人生楽ありゃ 苦もあるさ〜)
- まんが日本昔ばなしの主題歌「にっぽん昔ばなし」 (坊や 良い子だ ねんねしな〜)
- Dr.スランプ アラレちゃんの主題歌「ワイワイワールド」 (きったぞーきたぞ アラレちゃん〜)
- チェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」(ちっちゃな頃から 悪ガキで〜)
- 山本リンダの「どうにもとまらない 」(噂を信じちゃいけないよ〜)
→全部「生麦・生米・生卵〜」の繰り返しで歌えます。
ちなみにタイトルの「語呂が良い! 声に出したくなる言葉【3つの理由を考えてみた】」は無理に五七五七七にしました。
→変更しました。
声に出したい言葉の3つの理由まとめ
声に出したい言葉の理由をまとめると
- 音としての楽しさ 「半濁音の法則」
- 口の動きが楽しい「発音しやすい母音の組み合わせと韻を踏んでいるか」
- 日本古来のリズム「七五調」
ネーミングやキャッチコピーは奥が深そうなジャンルですね。
ミュージシャンやコピーライター、芸人、放送作家、映画監督、漫画家など全てのクリエイターはどのように言葉と向き合ってコピーを考えてるのでしょうか?
今回色々と調べてみて、国の名前、CMのキャッチコピーや、映画のタイトル、漫画のセリフ、音楽の歌詞に至るまで、案外リズミカルな言葉は存在するものだと感心しました。
狙ってやったのかわかりませんが、きっとセンスだけでなくある程度はこう言った事を学んで制作しているのでしょうね。
とりあえず次回何かのネーミングをする時は、これを思い出して考えようと思います。
↓また、過去の記事ですが、こんな名前の付け方も面白いですね。
※個人的な独自の考察のため、エビデンスは少ないです。
実際にマーケティングやキャッチコピーで効果があるかどうかはわかりません。
何卒よしなに。