はじめに
宿野かほる著の「ルビンの壺が割れた」を読みました。
昨年発売前に「無料で全文を公開してキャッチコピーを募集する」という新たな試みのキャンペーンで話題になった一冊です。
その中の5つの優秀作は実際の帯として使用されております。
・読まないと割れませんよ?
・これは、文字で描かれた騙し絵だ。
・こんなにも心と体が震えるラブレターがあっただろうか。
・割れ物注意。
・帯もカバーも見てはいけない。あらすじやレビューも見るべきではない。そして今すぐ本を開き、読み始めた方がいい。それが今年最も凄い小説を味わう最良の方法だ。
応募されたキャッチコピーは6015件にもなり、書籍の表紙をめくると応募された数々のキャッチコピーが載っております。
下記サイトでも見られますので、気になる方は是非どうぞ。
出展:『ルビンの壺が割れた』宿野かほる キャッチコピー 優秀作品5作発表!!
ここからは感想になるので、まだ未読の方は、ページをそっと閉じて書店で購入して読んでください。
この本は一度ネタバレしてしまうともったいない、何も知らないで読むべき作品だからです。
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感想
ここからはネタバレ含みますのでご注意ください。
ルビンの壺とは、壺の凹凸を側面からみると、人の顔が向かい合っているように見える壺のことで、1915年ごろにデンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案したのでその名がつけられました。
作中では男女のやり取りが描かれており、文字通り”人が向かい合っているように見える壺”が”割れた”ということになるのだと思います。
ルビンの壺がいつ割れるかと気にしながら読んでしまいましたが、気が付いたら割れてました。
お話は全てフェイスブックのメッセージで男と女のやり取りをまとめたものでしたが、SNSでみえる世界はほんの一面に過ぎず、その人の本質など細かいところは隠そうとすればいくらでも隠れてしまうものなのだと思いました。
まあ、はじめから最後までストーカー気質のようなヤバさ(自分本位な言動など)はにじみ出てましたが……
男からはそんなヤバさがにじみ出てましたが、女が最後にはなった口調がそれまでのイメージと一転していたので、逆の意味で驚きました。
いくら激高していたからといっても、あの年代の女性でそのような口調を使用するなんて……と一瞬思いましたが、僕の中である種アイドル崇拝のような勝手なイメージ像が出来上がっていたことも、このお話の「SNSなどの顔の見えない文字だけのやり取りでは、その人のほんの一面を映し出したに過ぎない」という教訓と重なりますね。
心理学用語で、人には自分では気が付かないうちに「こうである」と決めてしまう特性「認知バイアス」があります。
膨大な情報を処理するために、先入観や思い込み、恐怖や願望で時に不合理な選択をしてしまうのです。
認知バイアスの中の「確証バイアス」は思い込み強化、都合の良い事実しか見ないといった傾向になります。今回の男はまさにこれで、こうであってほしいという願望に起因する思い込みが作中の悲劇や事件を起こしたのではないかと思います。
男女のメッセージでのやり取りを見るに「自己奉仕バイアス」(成功は自分の力、失敗は他人のせい)も発揮されてましたね。失敗したときに自分にはどうすることもできなかったと思ってしまう特性です。
要は自分勝手な男ってことです。
しかし、そういった要因は誰しもが少なからず持っているものです。
僕も自分勝手にならないように、バイアス(色眼鏡)を外して生活したいと思います。
さいごに
人の感情を読む能力はミラーニューロンなどが関わっており、共感能力というものが大事だと言われております。
この共感能力を高める方法というのが、ひとつは最近流行っているマインドフルネス瞑想。2つ目がストーリー性のある物語を読むこと。つまり読書です。
頭の中でしかわからない人の感情などの動きを頭の中で想像して読むことで共感能力が高まるってことですね。
僕は人の機微に疎いので今年はどんどん本を読もうと思います。