前に友人におすすめされた書籍を読みました。
普通はどうかわかりませんが、僕はとても主人公に共感しました。
村田 沙耶香「コンビニ人間」
2016年7月27日発売
第155回芥川龍之介賞 受賞
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あらすじ
ヒロイン古倉恵子は三十半ばだが、正規の就職をせずに大学時代に始めたコンビニのアルバイトを続けている。
子供の頃から変わり者で人間関係が希薄、恋愛経験も皆無だった古倉は、コンビニで仕事を始めたことをきっかけに周囲の人たちの真似をしたり妹の助言に従ったりすることで普通の人らしく振る舞う方法を身につけ、この経験をこれまで世間一般の人間の規格から外れていた自分が初めて「人間」として誕生した瞬間と位置づけていた。以来古倉は私生活でもそのほとんどを「コンビニでの仕事を円滑に行うため」という基準に従って過ごしつつ、なんとか常人を演じ続けてきた。しかし、加齢やそれに伴って周囲からの干渉が増えたことによりそのような生き方は徐々に限界に達しつつあった。
そんな時、古倉はかつて就労の動機を婚活だとうそぶき、常連の女性客につきまとい行為を働いて解雇された元バイト仲間の白羽という男と再会する。ひょんなことから白羽と奇妙な同居生活を始めることになった古倉は、それを「同棲」と勝手に解釈して色めきたった周囲の人たちの反応に若干の戸惑いをおぼえつつも冷静に彼らを観察し、白羽との関係を便利なものと判断する。
やがて古倉は白羽の要求によりコンビニを辞めて就活を始めることになる。しかし、面接に向かう途中でたまたま立ち寄ったコンビニで、自身の経験から図らずも店の窮地を救った彼女は、コンビニ店員こそが自分の唯一の生きる道であることを強く再認識し、白羽との関係を解消してコンビニに復職することを心に誓うのだった。
感想
親近感
就職や結婚など”普通”の価値観を押し付ける世間と、日常を不器用に生きるコンビニ店員のお話。
主人公は最初に突飛な言動で価値観が普通とは異なる人間だということがわかるが、「皆が言う”普通”にならなければいけない」と、始終周囲の顔色を気にした生活を送っているようなので、案外親近感を覚えた人も多いのではないだろうか。
コンビニ、36歳、未婚女性、アルバイト、就職や結婚の悩み、周囲からの期待、 不得手なコミュニケーション、価値観の相違と苦悩。
内容すべてに共感を抱きやすいキーワードが盛り込まれているので、読んでいるとそのリアルな世界観にすぐに引き込まれてしまう。
みんな影響されてるよね
ところで、”類は友を呼ぶ”といいますが、実際のところ本当に似た性格の人間が集まるものでしょうか。
実際には、朱に交われば赤くなるという言葉のように、まるっきり因果関係が逆で、近くにいる人間からの影響を受けているからこそ、性格などの類似性がみられるのではないでしょうか。
人は周囲の人に影響されて言動や考えが似てくるそうです。
たしかに少し考えてみれば、日常でインプットする情報が同じなら、アウトプットする情報もどんどん似たようなものになるということですね。
まったく同じ食生活で同じ運動量なら同じような体型になるでしょうし、国ごとの国民性などはその最たるものです。
ですので、みなさんもお話の主人公のように、少なからず周囲から影響されて作られた性格だと思います。
僕も少し八方美人の節はありますが、絶えず周囲の影響を受けて今の自分が形成されているといえます。
価値観は環境が大事
冒頭で動かなくなった鳥を前に”焼鳥にしてはどうか”という言動は、マンガ寄生獣のエピソードを思い出しました。
シンイチが交通事故で死んでしまった子犬を、ただの肉だと言ってゴミ箱に捨てたシーンです。
人としての価値観を無くした"合理的な行動"は、普通の人間から見ると思いやりがなく感情が感じられない異常な行動と判断されます。これはベースになる価値観がそもそも異なるから起こりうるのです。
価値観とは、「世界とはこうなっているんだ」と成長とともに周囲の環境から学び身に着けるものです。
子供は親の背中のみならず、他人の腹の内や、テレビから流れる雑音、ラーメン屋の行列、木陰で叫ぶ蝉の声からも学び育つのです。
ふと、人間だもので有名な相田みつさんの「うつくしいものを 美しいと思える あなたのこころがうつくしい」という言葉が思い出されます。
その”うつくしいこころ”こそ幼少から育むべき要因だと思います。
閑話休題
主人公古倉の価値観は一見突飛なものですが、その大本は家族に普通であって欲しいと望まれたから生まれたものです。
自分の頭で思考した行動より、こうすれば家族が喜ぶだろうと思う”普通”を追い求めることに重きを置いた結果でしょう。
そもそも他人と全く同じ考えの人間はいません。双子でも違うことを考えます。
自分の個性を個性として受け入れることができなければ主人公古倉のように性格を合わせ続けることになるでしょう。
KY は共感能力が低い人
また、他人に合わせるのが苦手な人は共感能力が低い可能性があります。
共感力が低いがゆえに、他人が嫌がるであろうことに気が付かず空気を読まない言動で周囲の時間を止めてしまうことがあると思います。
そういった人は、自分の感情、どういうときに喜びを感じ、どういうときに憤るのかを理解していなかったり、制御できなかったりします。
怒りや悲しみなどマイナスの感情を冷静にコントロールできるよう日頃からトレーニングしておきましょう。
以上。
そんなことなどを再度考えさせられる、面白い内容でした。
自分と他者を比較して落ち込んでしまう人がいますが、他人と比較することは精神衛生的によろしくありません。
僕のように能天気だといけませんが、ポジティブ思考は生活を豊かにしてくれますので、最後に一冊おすすめしておきます。
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内容は科学的に根拠ある事例を集めて編集したものですので、とても確実で実用的だと思います。